教育費の貯め方は?平均的な必要資金やおすすめの貯め方をFPが解説

結婚をしてこれからのことを考えるうちの一つとして、「子どもは何人がいいかな?」と考える人も少なくないでしょう。

子どもを何人授かりたいかを考える時に、ふと頭によぎるのが、「子育て、特に教育費にどれくらいのお金がかかるのだろう・・・」と心配になる人もいるでしょう。

そこで、今回は教育費にどの程度のお金がかかるのか、どのようにお金を準備していくのがよいのかをご紹介します。

目次

教育費はどれくらいかかるの?

教育費っていくらかかるの?

幼稚園から高校までにかかる教育費は?

文部科学省や日本政策金融公庫などの調査によると、子ども1人を大学卒業まで育てるのに必要な教育費は、どのような教育を与えたいのか、子どもがどのような学校で学びたいのかによって大きく異なります

地域によって異なりますが、以下の表は「幼稚園から大学まで」の教育費の平均額をまとめたものになります。

学校種別公立の場合(合計)私立の場合(合計)備考
幼稚園約70万円約150万円私立は在園期間が長い場合さらに増加
小学校約190万円約960万円公私立で大きな差
中学校約150万円約420万円私立は学費以外に寄付金も
高校約140万円約300万円公立は授業料無償化制度あり
大学(4年制)約250万円(国立)約420〜550万円(私立文系〜理系)医歯薬系はさらに高額(1,000万円以上)

このほか、共働きで、出産後、育児休暇の期間が終わったらすぐにフルタイムで働きたいといった場合には保育園の費用なども必要です。

保育園の費用は認定の有無や形式などによっても異なりますし、住んでいる自治体によっても補助の制度があることや、年収によっても保護者が負担する費用が異なる場合があります。

大阪でご相談に来られた方のお話を聞いていると、共働きの方の場合で、「月7万円程度かかっている」という人が多い印象です。

また、大阪では高校無償化の範囲が広がっていますが、大阪市内に住んでいても通われる学校が無償化の対象外の場合などもありますので、自治体の補助や進学したい先の情報を早めに入手して準備することが大事になります。

また、これらの費用には学外費(塾やクラブ活動など)の費用も含まれていますが、感覚的には、平均化されていることで、実際に必要な費用より少なく計上されているようにも感じます。

大学の教育費や生活費は?

次に大学の授業料などを見ていきましょう。データは4年間の合計金額となっています。

【大学別の費用目安(4年間合計)】

区分授業料・入学金教材・諸経費自宅生の生活費下宿生の生活費(仕送り含む)合計目安
国立大学約250万円約60万円約100万円約400万円自宅:約410万円 / 下宿:約710万円
私立文系約420万円約80万円約100万円約400万円自宅:約600万円 / 下宿:約900万円
私立理系約550万円約100万円約100万円約400万円自宅:約750万円 / 下宿:約1,050万円
私立医歯薬系約1,000万〜2,000万円別途高額約100万円約400万円総額で2,000万円以上になることも

個人的な肌感覚では、授業料・入学金は関西圏の大学ではもう少し必要と思われます。

また、理系の場合は、大学院への進学も多く、6年間通うことを想定しておいた方がいいでしょう。

専門学校にかかる費用

専門学校の授業料は安いイメージを持っている人も少なくありませんが、意外と大学の授業料と同程度かそれ以上かかる場合も珍しくありません。

特に、調理系や理美容系の場合、最初の道具(包丁やハサミなど)のセットの購入が必要な場合も多く、実地研修などでの別途費用が掛かる場合もあります。

【大学生の年間生活費の目安】

年間生活費の内訳(学費を除く)
大学(昼間部)学生の年間生活費(学費を除く)は、居住形態によって大きく変わります。


A. 自宅外通学(一人暮らし)の生活費(月額平均)
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)の「第60回学生生活実態調査 概要報告」(2023年10月~11月実施)によると、一人暮らしの大学生の1ヶ月あたりの生活費の平均は131,720円でした。年間では、約158万円になります。

費目月額平均(円)備考
支出合計131,720
住居費56,090家賃、共益費、光熱水費などを含む
食費26,110
教養娯楽費13,870教養、娯楽、趣味など
貯金・繰越14,250
交通費5,050
日常費7,520
電話・通信3,320
書籍費1,500
勉学費1,300
その他2,710

B. 自宅通学(実家暮らし)の生活費(月額平均)


同じく「第60回学生生活実態調査 概要報告」によると、実家暮らしの大学生の1ヶ月あたりの生活費の平均は69,510円でした。年間では、約83万円になります。

費目月額平均(円)備考
支出合計69,510
貯金・繰越18,360
教養娯楽費14,740教養、娯楽、趣味など
食費14,340
交通費9,850
日常費5,890
電話・通信1,410
書籍費1,450
勉学費1,020
住居費600
その他1,850

生活費の一部はアルバイトなどで子ども自身が工面するケースもありますので、あくまで目安としておくといいでしょう。

また、地域によっては、下宿などがなく、アパートやマンションでの一人暮らしになると統計データより支出は大きくなる傾向があることも意識しておきましょう。

教育費をサポートする公的制度

教育費をすべて自己資金で用意するのは大変です。そこで活用できるのが 公的制度です

まずは、全国一律で受けることができる制度について説明します

児童手当制度

児童手当制度は、比較的古くからある制度ですが、受け取ることができる金額や期間などは変化し続けています。

実際、2024年にも制度変更があったのでしっかりと確認しましょう

(1) 支給対象年齢:
 18歳に達した後の最初の3月31日まで(=高校3年生相当まで)
(2) 所得制限:
 所得制限・所得上限限度額を撤廃(すべての世帯が対象)
(3) 支給額(月額/児童1人あたり):
 - 3歳未満:
  ・第1子・第2子 → 15,000円
  ・第3子以降 → 30,000円
 - 3歳?高校生年代(18歳年度末まで):
  ・第1子・第2子 → 10,000円
  ・第3子以降 → 30,000円
(4) 多子加算のカウント対象:
 22歳年度末までの子どもも「第○子」の数え方に含める(大学生なども人数カウント対象)
(5) 支給回数:
 年6回(偶数月ごと:2・4・6・8・10・12月)
 → 各回で前月までの2か月分を支給
(6) 支給対象の要件:
 国内に住所がある18歳年度末までの子ども
 (留学などの場合は一定条件で例外あり)
(7) 申請が必要なケース:
 新たに高校生年代の子が対象になる場合や、以前は所得制限で受給していなかった世帯は改めて申請が必要

高校授業料無償化制度(高等学校等就学支援金制度)

2025年現在、高校授業料の無償化制度(高等学校等就学支援金制度)は以下のようになっています。

  • 国公立高校:2025年度から所得制限が撤廃され、すべての世帯で年間授業料相当額(11万8,800円)が支給されることになり、実質的に無償化されました。
  • 私立高校:
    • 年収制限なし:すべての世帯に対して、年間11万8,800円を上限として支給されます。
    • 年収約590万円未満の世帯:年間39万6,000円を上限に上乗せして支給されます。

確定ではありませんが、今後の見込みとして、2026年度からは、私立高校についても所得制限が撤廃され、全国平均授業料相当額(45万7,000円)まで支給上限が引き上げられる方針で検討が進められています。

東京都や大阪府など一部の自治体では、国の制度に加えて独自の支援制度を設け、国の所得制限を超えた世帯にも授業料の無償化を拡大する取り組みを実施しています。

この制度は授業料に充てるための支援金であり、入学金や修学旅行積立金などの授業料以外の費用は自己負担となる点にご注意しましょう。

自治体独自の支援も

市区町村によっては、独自の子育て、教育に対する支援制度がある場合があります。

以下は大阪府下での支援制度の一例です

特に子育て支援に力を入れているとされる市区町村の、独自の取り組みの一部をご紹介します。

自治体独自の主な取り組みの例
大阪市塾代助成事業:小学5年生から中学3年生を対象に、学習塾や習い事の費用の一部(最大月1万円)を助成。(所得制限撤廃の動きあり) ・出産・子育て応援交付金:妊娠届出時と出生時にそれぞれ給付金を支給。 ・児童いきいき放課後事業:市立小学校で小学生の放課後の居場所を提供。
吹田市・高校卒業までの医療費無料化(多くの自治体で拡大中) ・転入時の保育料割引(独自の制度) ・子育て支援センターの充実
高槻市・高校卒業までの医療費助成(多くの自治体で拡大中) ・妊婦健診の助成回数や金額の充実 ・待機児童ゼロの継続
大東市ネウボランドだいとう:妊娠期から切れ目のない支援を行う子育て総合窓口の設置。 ・子育てスマイルサポート券:出産時に育児消耗品購入に使えるサポート券を交付。
八尾市2歳児の保育料無償化(独自の制度) ・妊婦健診の助成回数や金額の充実(16回など)
和泉市南部地域等移住定住支援補助金:南部地域へ移住定住する子育て世帯への補助。 ・高校卒業までの医療費助成
柏原市3世代近居・同居支援:近居・同居を目的とした住宅取得に対する補助。

これらの制度はこのコラムを作成した時点(2025年10月時点)での制度となっています。制度は変更されることがあります制度の内容(対象年齢、所得制限、助成額など)は、年度や各自治体の財政状況によって常に変更・見直しが行われています。

また、ここに挙げた情報は代表的なものであり、他にも異なる制度がある場合もあります。市区町村の各役所や官報、ホームページなどでも確認するようにしましょう。

奨学金

奨学金を活用しよう

教育費を準備できなかったことで、進学をあきらめないためにも奨学金や教育ローンの活用も考えてもいいでしょう。

ここでは、日本の学生に対する最も一般的な支援制度である日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について紹介します

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には「給付型」と「貸与型」の2種類があります。

その概要と利用上の主な注意点について説明します。

奨学金の種類と概要

次のような種類と概要があります。

種類特徴対象者
【給付型】返済が不要。「高等教育の修学支援新制度」に含まれ、授業料等の減免とセットで受けられる。住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯(所得に応じた複数の区分がある)。学力・家計の両方の基準を満たす必要がある。
【貸与型】卒業後に学生本人が返済する必要がある。学力と家計の基準を満たす者。
└ 第一種無利子で借りられる。給付型よりも緩やかな学力・家計の基準がある。
└ 第二種有利子で借りられる(在学中は無利子)。第一種よりも学力・家計の基準が比較的緩やか。
入学時特別増額貸与奨学金初回振込時に一回限りでまとまった金額を貸与する(有利子)。国の教育ローンを借りられない場合に利用できる。

利用上の主な注意点とポイント

奨学金は「借金」である(貸与型)

  • 返済義務者: 貸与型奨学金は、学生本人が債務者となり、卒業後に長期間にわたって返済する義務を負います。
  • 返済計画: 借り入れ前に、将来の職業や収入を見込み、無理のない返済計画を立てることが極めて重要です。延滞すると、個人信用情報機関に登録され、将来の住宅ローンやクレジットカードの審査に影響が出る可能性があります。
  • 延滞金: 延滞が発生した場合、延滞金が課せられます(賦課率は年3%に引き下げられています)。

② 入学金には充てられない

  • 奨学金は基本的に入学後に毎月(または初回にまとめて)振り込まれるため、入学前に必要な入学金や授業料の初期費用には充てられません。
  • これらの費用は、教育ローンや保護者の貯蓄で用意する必要があります。

③ 厳格な審査基準がある(家計・学力・資産)

  • 家計基準: 世帯収入(親の年収)だけでなく、資産(本人と生計維持者の預貯金や有価証券の合計。不動産や学資保険は含まれない)にも基準が設けられています。
  • 学力基準: 特に給付型や第一種では、高校の成績評価の平均値に基準が設けられています(例:第一種は3.5以上が目安)。
  • 多子世帯の拡充: 2025年度からは、多子世帯(子ども3人以上)に対する支援が大幅に拡充され、所得制限なしで授業料等の満額減免が受けられるようになります(資産要件はあり)。

④ 継続には「学業成績」の維持が必要

  • 奨学金の支給(特に給付型)は、採用後も毎年行われる**「適格認定(学業)」**で審査されます。
  • 学業成績が著しく悪い場合(修得単位数が少ない、出席率が低いなど)、奨学金の支給が停止または廃止(打ち切り)となり、場合によっては支給済みの給付金を返還しなければならないことがあります。

⑤ 併用と併給調整

  • 給付型奨学金と貸与型奨学金(第二種)は併用できます。
  • ただし、給付型奨学金と第一種奨学金(無利子)を併用する場合は、支援区分に応じて第一種奨学金の貸与月額が減額(併給調整)されます。

また、申込の時期は高校3年生の春(4~6月)に開始します。入学直前や入学後も奨学金の申し込みを行うことはできますが、進学当初の授業料や生活費には間に合わないことや、大学での成績などによっては奨学金を受け取ることができない場合もあります。

奨学金を利用するかしないかが決まっていない場合でも、初期の段階でひとまず申し込みを行っておくようにしましょう。

最新の制度や詳細な基準は、進学先の学校または日本学生支援機構(JASSO)の公式ウェブサイトや学校で必ずご確認するようにしましょう。

教育ローン

一言で教育ローンといっても、大きく分けて日本政策金融公庫が扱う「国の教育ローン」は、民間の金融機関の教育ローンがあります。

以下に概要と、国の教育ローンと民間の金融機関の教育ローンとの違いをまとめます。

日本政策金融公庫の教育ローン(教育一般貸付)の概要

「国の教育ローン」は、家庭の経済的負担を軽減し、教育の機会均等に貢献することを目的とした公的な融資制度です。

項目概要
融資の目的教育資金(学校納付金、受験費用、住居費用、教科書代など、今後1年間に必要となる費用)
融資限度額お子さま1人につき350万円以内。一定の要件(自宅外通学、大学院、海外留学など)に該当する場合は450万円以内。
金利固定金利(民間の教育ローンより低い傾向)。母子・父子家庭や世帯年収が低い場合などの優遇制度がある。
申込者お子さまの保護者(主に生計を維持している方)。学生本人の学力は問われない。
申込時期いつでも申込可能(進学先の合格発表前でも可)。入学前に資金を受け取れる。
返済期間最長20年(優遇制度利用者は延長あり)。
据置期間お子さまの在学期間中は利息のみの返済とする**「元金据置」**が可能。
保証担保は不要。連帯保証人を立てるか、(公財)教育資金融資保証基金の保証を利用(保証料が必要)する。

民間の金融機関の教育ローンとの違い

国の教育ローンと銀行の教育ローンは、それぞれ特徴が異なりますので、違いについて表にまとめました。

比較項目日本政策金融公庫(国の教育ローン)一般的な銀行の教育ローン
運営主体国の政策金融機関(公的な融資制度)民間の金融機関(銀行、信用金庫など)
利用制限世帯年収に上限がある(お子さまの人数に応じて基準が定められている)。世帯年収の上限はない。金融機関独自の安定した収入(年収下限)の基準がある。
金利固定金利で、銀行より低金利の傾向。優遇制度あり。変動金利が多いが、固定金利も選択可能。国の教育ローンより金利が高めの傾向。
融資限度額350万円/450万円が上限。金融機関によって異なるが、500万円~1,0,00万円程度まで借り入れ可能な場合がある。
借入形態一括貸付(証書貸付)のみ。一括貸付(証書貸付)と、必要な時に都度借り入れできるカードローン型がある。
団信原則、団体信用生命保険の取り扱いはない。団体信用生命保険に加入できる場合が多い(加入を義務付ける場合もある)。

使い分けのポイント

  • 国の教育ローン:
    • 世帯年収が上限基準内である。
    • 低金利で借りたい、または優遇制度を利用できる。
    • 借入希望額が350万円/450万円以内で収まる。
  • 一般的な銀行の教育ローン:
    • 世帯年収が国の教育ローンの上限を超えている。
    • 国の教育ローンの上限を超える高額な資金が必要。
    • カードローン型で必要な時に繰り返し借りたい。

まずは国の教育ローンを検討し、基準外であったり、融資額が不足したりする場合に、銀行の教育ローンを検討するのが一般的な流れです。

効率的な教育費の貯め方

ファイナンシャルプランナーが考える教育費の貯め方

教育費は「まとまった金額を進学までの期間で用意する」必要があります。老後資金に比べると短い期間で準備する必要があります。

なるべく確実に貯めていきたいと考える人が多いでしょうから、「余裕があった月やボーナスの余りを活用する」のではなく、毎月やボーナスの時に決まった金額を確保する「先取り積み立て方式」がよいでしょう

どのような先取り積み立て方式を利用できる商品があるか見ていきましょう

積み立て定期預金

1. 積み立て定期預金の仕組み:預入方法: 毎月指定した日(例:給料日直後)に、設定した金額(例:1万円)が普通預金口座から自動的に引き落とされ、定期預金として積み立てられていきます。預入単位: 多くの金融機関で、1,000円や1万円といった少額からスタートできます。

満期: 積み立てられたお金は、1回の積立ごとに(あるいは合計額として)決められた期間(例:1年、3年)が経つと満期を迎えます。満期を迎えた資金は、自動的に継続(複利効果が期待できる)されるか、普通預金に戻すかを選べます。

メリット

① 確実に貯蓄できる(先取り貯蓄の自動化):「残ったら貯金」ではなく、「先に貯金」を自動で行うため、貯蓄が苦手な方でも意思の力に頼らず確実に貯められます。旅行資金、車の購入資金、教育資金など、明確な目的がある場合に特に有効です。

② 普通預金よりも金利が高い:普通預金と比べて、一般的に金利が高く設定されています。低金利時代においては大きな差ではありませんが、安全性を確保しながら、少しでも有利に資金を増やしたい場合に適しています。

③ 少額から始められる:まとまった資金がなくても、月々数千円や1万円といった無理のない金額から始められ、途中で積立額の変更や一時停止も比較的柔軟に可能な商品が多いです。

④ 元本保証で安全性が高い:定期預金であるため、元本が保証されており、銀行が破綻した場合でも預金保険制度により一定額(1,00ikan円とその利息)まで保護されます。

デメリットと注意点

① 途中解約の金利が低くなる:定期預金と同様に、満期前に解約して引き出すことは可能ですが、その場合は当初約束された金利ではなく、**「中途解約利率」**という低い金利が適用されます。

② 普通預金と比べて流動性が低い:普通預金のようにATMから自由に出し入れできるわけではなく、引き出しには中途解約などの手続きが必要です。このため、「いつでも使えるお金」と「目的を持って貯めるお金」を分けられますが、急にお金が必要になった際の即時性は劣ります。

③ 大きなリターンは期待できない:金利は普通預金より高いものの、株式や投資信託といった投資商品と比べると資産を大きく増やすことは期待できません。安全性を重視した「守りの貯蓄」のための商品です。

学資保険などの貯蓄性のある保険

学資保険などの貯蓄性のある保険は、子どもの教育資金を計画的かつ確実に準備することを目的とした貯蓄型保険です。契約者である親が保険料を一定期間積み立てることで、子どもの進学など、あらかじめ決めたタイミングで「進学祝い金」や「満期保険金」という形で資金を受け取ることができます。ただ貯蓄するだけでなく、万が一の事態に備える「保障」が組み込まれている点が、銀行預金や他の金融商品にはない最大の特徴です。

メリット

①確実な資金確保(保険料払込免除):契約者である親に万が一のことがあったり、高度障害状態になったりした場合、以後の保険料の支払いが免除されます。それにもかかわらず、契約時に定めた満期保険金や祝い金は全額、予定通りに受け取れるため、親にもしものことがあっても子どもの教育資金に影響が出ません。これは貯蓄や投資信託にはない、学資保険特有の強力なメリットです。

②計画的な貯蓄習慣:毎月決まった日に保険料が自動的に引き落とされるため、「先取り貯蓄」を習慣化でき、貯蓄が苦手な方でも着実に資金を積み立てることができます。簡単にお金を引き出せない仕組みになっているため、「貯める」という目的を達成しやすいです。

③税制優遇(生命保険料控除):払い込んだ保険料は生命保険料控除の対象となるため、年末調整などで所得税や住民税の負担を一部軽減できる可能性があります。

デメリット

①途中解約で元本割れのリスク:契約期間の途中で保険を解約すると、解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回ってしまう(元本割れ)可能性が非常に高いです。そのため、一度加入したら満期まで継続することが前提となります。無理のない保険料設定が重要です。

②インフレに弱い:学資保険は基本的に契約時に受け取る金額が確定する定額の貯蓄です。将来的に物価や教育費が大きく上昇する(インフレーション)と、受け取るお金の価値が相対的に目減りしてしまう可能性があります。

③高い利回りは期待できない:元本が保証されているため安全性が高い反面、効率よく資産を増やすことはできません。運用益の非課税優遇がある積立NISAなどの投資商品と比較すると、資金を増やす力(利回り)は低くなります。

④資金の流動性が低い:積み立てたお金は満期まで簡単に引き出せないため、急な資金需要に対応しにくいです。子どもの急な病気や予期せぬ出費のために、学資保険とは別にすぐに使える普通預金も確保しておく必要があります。

投資信託(つみたてNISA枠の活用)

つみたてNISA枠を用いて投資信託による資産運用を行うことは、将来の必要な資産を投資によって増やしていくことを目的とした非課税制度です。

NISA(つみたて投資枠、成長投資枠)最大の特性は、通常、投資で得た利益(運用益)にかかる約20%の税金が、NISA口座内で得られた利益についてはすべて非課税になるという点です。これにより、非課税の恩恵を最大限に活用し、学資保険や銀行預金と比べてより大きなリターンを目指します。

つみたて投資枠で購入できる投資信託は、金融庁の定める基準を満たした投資信託を選んで、毎月一定額を積み立てていく仕組みであり、子どもの年齢が低く、運用期間を長く取れるほど、元本割れのリスクを下げつつ資産が増える可能性が高まります。

メリット

①高い期待リターンとインフレ対策:運用がうまくいけば、学資保険や預金よりも大幅に高いリターンを得られる可能性があります。また、投資信託は一般的に物価上昇(インフレ)に対応できるといわれており、将来、教育費が高くなっても対応できるだけの資金力を築ける可能性があります。

②運用益が非課税:NISA枠を使って投資した結果で得た利益が全額非課税になるため、効率よく資産を増やせます。教育資金の準備という長期的な目標には、この非課税効果が非常に大きく働きます。

③高い資金の柔軟性(いつでも引き出し可能)学資保険と異なり、「何歳まで引き出すと損失が発生する可能性が高い」という縛りがなく、原則としていつでも資金の引き出し(売却)が可能です。そのため、当初の計画より早く資金が必要になったり、積立額を一時的に変更したり、子どもの進路によって必要な時期に必要な分だけ資金を使うなど、柔軟な対応ができます。

デメリット

①元本割れのリスクがある:投資であるため、市場の状況によっては積み立てた元本を下回る(元本割れ)リスクがあります。教育資金が必要な時期(特に大学入学前など)に相場が暴落していると、目標額に到達できない可能性があります。

②万が一の保障がない:学資保険の最大の強みである**「保険料払込免除」のような保障機能がありません**。契約者にもしものことがあった場合、積み立てはそこでストップし、残された資産は相続の対象となります。その後の教育資金の準備は家族が継続して行う必要があります。

③資金管理の自己責任:資金の引き出しが自由な分、「ついつい他の用途に使ってしまう」といった自己管理の難しさがあります。また、売却のタイミングも自分で判断しなければなりません。

④掛金は税制優遇の対象外:運用益は非課税ですが、学資保険のように払い込んだ掛金そのものが生命保険料控除の対象にはならないため、節税効果は運用益に限定されます。

それぞれの商品や仕組みには一長一短があり、すべての要望を満たす商品や制度はありません。ご自身にあった商品や仕組みを使うようにしましょう。

また、どれかひとつの商品で準備をするのではなく、複数の商品を組み合わせてリスクを抑えながら、資産を増やすことも考えるようにしましょう。

まとめ

子育て・教育費を準備したいと考える場合、やみくもに貯金をしたり投資をするのではなく、まずは「いくらくらいのお金が必要になるだろう」とうことをこのコラムや統計データ、友人などからも情報を収集して「実際に必要な金額」を知ることが大事です。

そのうえで、「毎月」「どれくらい」を貯めていくのか?どのような方法や商品を使えばよいのかをしっかり考え、選ぶようにしましょう。

自分たちだけではなかなか、決めることができない、老後のことも考えるとどの程度まで教育費に使っていいのだろうか?などの悩みが解決しない場合は、ファイナンシャルプランナーに相談をして、ライフプランシミュレーションや専門家の知識を得て、納得して行動ができるようにサポートしてもらうことも検討しましょう。

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この記事を書いた人

中野 敦成のアバター 中野 敦成 ファイナンシャルプランナー(FP)

理系の大学を卒業後、エンジニアとして就職、金融機関勤務を経ず、2005年独立系FP事務所LBプランニングを開設。年間500件以上のマネー相談を受け、「生活者目線のわかりやすい説明」が評判を呼び、NHKや関西テレビなどでの出演、auカブコム証券、ARUHI、信用金庫などでのマネー記事の執筆、企業や行政などでのマネーセミナーなどの実績を持つ。現在も個人の住宅購入、資産運用、保険の見直しなどマネー相談を中心に活動中。2級ファイナンシャルプランナー技能士、AFP、証券外務員二種、DCプランナーを保有

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